それでは、「6つの内力」についての解説を始めます。
内力は6種類です。
これらは全て、体の内側で発生して、患部の組織を直接傷つけています。
その為、「内力」を治療で取り除くことが出来れば、痛みが軽減することがあります。
いわゆる「即時効果」というやつですね。
初回のリハビリで即時効果を出せると、とてもいい雰囲気になりますよね。
「あっ!さっきより全然痛くないです!」なんて言われたら嬉しいですよね。
しかし、逆パターンになった時の気まずさや焦りも思い出してください。
治療してみても全く症状が変わらない時は、「内力」の判断を間違えています。
もしくは、あなたの治療では「内力」にまったく影響を与えられていないということです。
即時効果を出せるかどうかは、「内力」を正しく推測できるかどうかです。
それができれば、即時効果を出せる可能性が高まります。
それでは、「6つの内力」を1つずつ解説していきます。
◆内力の具体例
運動器疾患と内力を結び付けると、こんな感じです。
特殊な知識が無くても、診断名からイメージできるはずです。
上から順番に確認していきましょう。
まずは「引っ張り」です。
「引っ張り」による疾患の代表例としては、
「オスグッド」「内・外側上顆炎」「捻挫」などが挙げられます。
付着部や筋腱移行部などが痛む疾患は全て、「引っ張り」の内力が生じている可能性が高いです。
この場合に即時効果を狙うならば、患部を引っ張っている力を軽減する必要があります。
例えば、マッサージなどで筋緊張を落とすことで症状軽減が可能なケースもあります。
しかし逆に、引っ張りを強めることをしてしまえば、症状は増悪します。
他の「引っ張り」による疾患は、捻挫です。
靭帯が伸張できる許容範囲を超えて引っ張られれば、誰だって靭帯を損傷します。
「引っ張り」による疾患は他にもあります。
引っ張りと関係がありそうな疾患名を想像してみて下さい。
ひとまず、「引っ張り」という内力についてイメージはできましたか?
どんな疾患においても、どんな「内力」が痛みを引き起こしているのかを冷静に考えましょう。
それさえできれば、リハビリでやるべきことは難しくありません。
では続いて、「圧迫」について考えましょう。
圧迫の代表例として、「変形性関節症」が挙げられます。
変形性関節症は、「圧迫」だけでなく「摩擦」も原因です。
「2つの内力」の合わせ技で、関節がすり減ってしまっている状態です。
内力は1つだけと決まっているわけではありません。
上記のような複合パターンも数多く存在します。
腱板損傷もそうです。
肩峰下での「圧迫」と「摩擦」の反復によるものと考えられます。
圧迫が生じている他の疾患としては、
「打撲症」「椎間板ヘルニア」「絞扼性神経障害(梨状筋症候群・胸郭出口症候群など)」も挙げられます。
「圧迫」のイメージは大丈夫でしょうか?
そして、これらの症例で即時効果を出すならば、やるべきことは単純です。
「圧迫」を取り除くことです。
患部の圧迫を取り除く技術を持っていれば、あなたは即時効果を出せます。
積極的に活用なさってください。
でも、そのような技術が無いならば、即時効果を期待して治療を行うべきではありません。
結果が出ないどころか悪循環にはまります。
治療⇒確認⇒イマイチな反応⇒再度治療⇒確認⇒イマイチな反応⇒再々度治療⇒・・・
この負のループに耐えられますか?
あなた「どうですか?」
患者さん「変わらないですね・・・」
この繰り返しが待っています。
患者さんとの信頼関係を築く上でも、マイナスイメージでしかありません。
根拠もなく「とりあえず」みたいなノリで治療を試すことは、お勧めできません。
一か八かで治療を試すくらいなら、内力が発生した原因を追及して下さい。
なんで「圧迫」が発生したのか?
患部に「圧迫」が生じてしまった根本的な理由を、しっかり突き止めて下さい。
判断の切り替えは重要です。
即時効果が出ないことに焦ってしまうと、治療をあれこれ試してしまいます。
でも、そんなときは治療を試すのではなく、原因追及に切り替えましょう。
内力を正常化する技が無い。
すぐに取り除くことができない内力が発生している。
こんな場合は、治療介入による即時効果はあきらめます。
そして、内力が発生した根本原因である「外力」を正す計画に切り替えます。
「外力」を正し計画は、即時効果のような短期計画ではなく、中長期計画となります。
今回の解説では中長期計画の詳細は割愛しますが、
ひとまず「即時効果が無理なら、外力正常化を狙った中長期プランに切り替える」とご理解ください。
即時効果を諦めることに抵抗がある人もいるかもしれません。
辛い患者さんの症状を、すぐに楽にしてあげたい気持ちは分かります。
しかし、それが可能な場合と、そうではない場合があります。
もしかしたら、
あなたの職場には「どんな症例でも即時効果を出している先輩」がいるかもしれません。
しかし、その先輩は治療技術が凄いのではありません。
「判断」が優れているのです。
即時効果を出せるケースなのかどうか、その判断が優れています。
勝てる勝負だけを選んで、負ける勝負は最初からしていません。
だから、いつもうまくいっているように見えます。
即時効果にこだわり続けると、負けると決まっている勝負にも挑んでしまいます。
その結果は悲惨です。
あなたは負けるべくして負けて、自信が打ち砕かれます。
さらに悪いことに、患者さんからの信頼も失われます。
「激痛で動けなかった患者さんが、まさかの!」みたいな展開を期待しないで下さい。
そんなスゴイ結果を出しまくっているように見える治療家もいるでしょう。
YouTubeなんて、そんな動画ばっかりです。
その動画の真偽は、僕には分かりません。
でも、1つ確実に言えることは「手技への過度な期待は、あなた自身を苦しめる」ということです。
未来のあなたなら、そんな神技技術を手に入れているかもしれません。
でも今は、即時効果は「嬉しいおまけ」くらいに認識して下さい。
だから、「おまけ」にこだわり過ぎないで下さい。
リハビリは即時効果が全てではありません。
それでは、残りの内力も見ていきましょう。
まずは「剪断」です。
地滑りのようにズレる力が患部に生じています。
「腰椎すべり症」や「腰椎分離症」の原因となる内力です。
また、「ACL損傷」の一因となっている可能性も考えられますね。
続いて、「曲げ」や「ねじれ」です。
「骨折」が代表例です。
「曲げ」の影響は、軟部組織に対しては少ないです。
軟らかい組織を曲げても、組織損傷は起こらず、何事もなく曲がるだけだからです。
軟部組織を限界まで曲げれば、「曲げ」が「引っ張り」へと変換されます。
そのレベルまで曲げ続ければ、軟部組織損傷も発生します。
「ねじれ」も同様です。
基本的に軟部組織への影響は少ないです。
軟部組織をねじり続けて限界に達すれば、「ねじれ」は「引っ張り」へと変換されます。
そのレベルまでねじられれば、軟部組織損傷も発生します。
しかし、「曲げ」も「ねじれ」による軟部組織損傷は、ほとんどありません。
可能性があるとすれば、椎間板変性くらいでしょうか。
しかし、脊椎には骨性・靭帯性の可動制限もあるので、どこまで影響しているかは不明です。
1つの可能性としてあるかもしれない、という程度です。
最後に「摩擦」ですね。
「変形性関節症」「腱板損傷」「上腕二頭筋長頭腱炎」などです。
これ以外にも「腸脛靭帯炎」「滑液包炎」「腱鞘炎」などの原因には「摩擦」が考えられます。
内力の具体例の紹介は以上です。
あなたが即時効果を出したいならば、どんな症例でも「異常な内力」を軽減する治療が必須です。
もしも「異常な内力」を取り除く方法を身につけていれば、積極的に活用しましょう。
即時効果の影響力は絶大です。
「患者さんとの信頼形成」「患者さんの心理的負担軽減」「肉体的苦痛の緩和」に繋がります。
しかし、「異常な内力」を軽減する方法がない場合、治療を試すことはやめて下さい。
それよりも「異常な内力」が発生した根本原因を探しましょう。
「異常な内力」が発生してしまった根本原因は、必ず「外力」です。
どんな時も「原因:外力」⇒「結果:内力」です。
この因果関係を忘れずに、根本原因である「外力」を突き止める評価を進めて下さい。
「治療を試してみるのも評価の一部」という考え方はあります。
しかし、「何となくだけど、良くなったらラッキー」みたいな治療はやめましょう。
どんな運動器疾患でも、やるべきことはシンプルです。
まずは、あなたが得られた情報から、患部に発生した「異常な内力」を推測して下さい。
その上で、即時効果を狙いにいくか、それとも評価を進めるか、判断して下さい。
内力の説明は以上です。
では、ここまでの話をまとめます。
次のスライドをご覧になってください。
まずは、どんな「内力」が患部にかかっているかを考えて下さい。
診断名と医師の見解からだけでも、それはイメージできます。
「内力」を推測するための情報収集は、身体評価だけではありません。
医師の見解・各種画像データ・問診などと併せて、総合的に判断します。
そして、自分なりに導き出した「異常な内力」を想定して、何をすべきかを考えます。
即時効果を出せそうな場合、積極的に治療を行ってみてください。
逆に、即時効果は難しいと判断したら、「外力」を特定するために評価を進めます。
そして、「外力」を特定するには、「外力」の理解が必須です。
外力の解説は、次回から行います。
根本原因をつきとめるために、ぜひ理解していただきたい内容です。
ここまでが、今回のテーマ「6つの内力」についての解説でした。
そして、今すぐ臨床で実践して頂きたいことがあります。
それは「患部にくわわる内力を考えてみること」です。
評価をしながら、頭の中で考えるだけで十分です。
技術も何もいりません。
すぐに実践できるはずです。
だから、どんな患者さんに対しても、必ず「内力」を考えてください。
「内力」について仮説を立ててみてください。
そして、それ実践し始めてからが、次のステップです。
「外力」を特定する段階へと進みましょう。
外力は「運動器リハの中核」です。
運動器疾患に対するリハで最重要ポイントです。
でも、その前に…
しつこくて恐縮ですが、まずは「内力を推測すること」を始めて下さい。
頭で理解しても、実践し始めなければ、あなたの現状は何も変わりません。
頭で理解したつもりでも、実践してみると理解が不十分な点があることに気づきます。
そしたら、不十分と感じたことを復習してみてください。
あとは継続するだけです
継続してもらえれば、あなたの臨床対応力は絶対に変わっていきます。
ありきたりな言葉で恐縮ですが、継続が力になります。
継続には頑張りが必要ですが、「あなたの頑張り」は絶対に無駄にさせません。
継続しても何も変わらないような「いいかげんなもの」ではありません。
それでは、次回からは「外力」の解説が始まります。
次回もよろしくお願いします。
STEP2の動画はこちら
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